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インタビュー2013-04-01

田中大輔 中野区長「中野の未来」を語る
  ※聞き手=中野経済新聞編集長 杉山司

中野駅周辺は4月から、キリングループをはじめとした企業、明治大学や帝京平成大学の開校で2万人以上の昼間人口の増加が予測されている。中野の産学公連携はますます加速している中で田中大輔中野区長は、これからどのようにして街づくりに取り組むのかを聞いた。

■はじめに

杉山:いつもお会いしている感じですが、こうして区長と真面目にお話をさせていただくのは初めてです。区長はカメラのファインダーの中の人、私はシャッターを切らせていただく側にいますので、私の中で区長は近くて遠い存在。本日はよろしくお願いします。

区長:そうでしたね、本日はよろしくお願いします。中野経済新聞、いつも見ています。記事の内容がほかの関連記事とひも付いていて色々な人や出来事がつながっていくのが素晴らしいと思っていました。掲載内容も今の中野の移り変わりをいろいろな角度で捉えていて頭が下がりますし、とても感謝しています。

杉山:結構(フェイスブックの)「いいね!」も押していただき、ありがとうございます。区長の「いいね!」が励みになります。これからもどうぞよろしくお願いします。

■区長の描いた中野とは

杉山:長年区長がつくろうとしてきた中野ですが、昨年71日にJR中野駅北口に東西連絡通路ができ、四季の都市(まち)が整備され、中野セントラルパークができ、栗田工業やキリングループなどの企業が入り、大学も開校し、現在さまざまなものが目に見える形で具現化されています。モノが具現化しない状態で右往左往しながら今の状態にまで持ってこられた区長から見て「区長が思い描いてきた新しい中野」と「今現在の中野」に差はありますか?

区長:街づくりはまだまだやらなければいけないことがたくさんある。3合目ぐらいのイメージ。ハード面は3合目、ソフト面だとまだ1合目ですね。ただ、いろいろなことが具現化する何年も前から産学公が連携し一体となって推進してきた結果、ハード的に変わりゆく中野を目の当たりにしたことでソフト面に対する連携が深まってきています。

杉山:そして、これからの中野。新たにキリングループ2700人、明治大学2500人、帝京平成大学5500人、4月から中野区、特に中野駅周辺の人口が数万人規模で増えると言われていますが、これは中野区がかつて経験したことのない状況。駅改札の問題、歩行者や自転車の問題、震災時問題など、区としての対策などは?

区長:四季の都市(まち)エリアに関する災害時協定などの対策は打っていますが、駅の出口や混雑に関する想定、対策はまだ具体的には打てていない状況。自転車対策も駐輪場の場所が悪く、人が集中するところに自転車が入るような作りになっていて非常に悪い構造なので、何かしら改善する必要があります。これから駅周辺に人が増えて、起こることに関しては未知数であると考えざるを得ない。われわれとしては未知数をとにかく早く把握し、具体的にどのような手が打てるかを考えて行かなければなりません。

杉山:大量の人の流れが生じて初めてわかる通行状況、昼食難民状況などを見ながら、迅速に対策を考え実行するということですね。

区長:難しい問題もあるし、手を打てばすぐに解決する問題もあると思いますが、それはそれで面白いと思っています。ただ、街づくり全体で言うと、もともと私は11年前に区長になっていますが、最初の区長選挙のときのメーンの公約が「警察大学校等跡地の街づくり」です。その場所には清掃工場を造ることになっていたのですが、それ当時既に新たな清掃工場は必要なくなっていました。その計画を無くし、街づくりを区民みんなで再考することから始まったんです。で、どのような場所にすべきかを区内経済団体などの協力も得ながら検討しました。新しい都市型の機能が必要だ、情報発信できるような街であってほしい、広域なので防災公園も必要などと議論し共に推進してきました。1年半くらい前からリアルに街が変わり始め、街が出来上がってきた段階では、まるっきり世界が変わってきた感じなので、さらに「産学公」の関係強化や議論の活発化が加速したわけです。

杉山:関係各位が水面下でいろいろな議論をしながら構想が練り上がっていることは外の人間にはあまり見えていないので、その時は実は私自身があまり興味を持っていなかったのですが、いろいろなところで工事が始まり、大学の看板が出始めたり、メディアなどで取り上げられるのを目の当たりにすることが多くなってきたときから、私自身も含め、区民の期待感やワクワクさなどを肌で感じられるようになりました。それと同時に「中野経済新聞」という発想が生まれてきたわけです。

区長:去年、東西連絡通路もでき、四季の森公園もできて、ビルも完成したわけですが、今の経済状況もあり、ビルのテナントに入る企業が決まるまでに少し時間がかかっているようです。キリングループが入ってもまだ7割くらいではないでしょうか。チューリッヒ保険とチューリッヒ生命日本支社、全国健康保険協会管掌健康保険(協会けんぽ)東京支部、経営統合を予定している損保ジャパンと日本興亜損保はすでに入居済み。中野セントラルパークイーストは栗田工業が入っています。まだ埋まっていない床についても、この秋には9割くらいが埋まると聞いています。

■都市観光について

区長:今年はいよいよ4月から大学が始まり、両大学で8000人(明治大学=2500人、帝京平成大学=5500人)の学生が来る。キリンも5月には2700人来るので、建物ができて「おっ、すごいぞ」と言っていた段階からまた一歩進むことになります。平成23年度から平成24年度にかけて、行政として使っている言葉として増えたのが「都市観光」。もちろん以前から少しは使っていた言葉ですが、新しいまちの形ができるまでは「そんなもの必要なのか」「神社仏閣もない、温泉もないところに何が観光なんだ」という反応でしかなかった。四季の都市(まち)ができた、その名前がついた、オフィスビルがカッコ良くできた、それで初めて「都市観光」という言葉が区内業者や団体、区民に素直に受け入れられるようになったと思います。そして中野区観光協会もできました。

これからは本当にたくさんの人が中野に来る、楽しむ、どうやって良い時間を過ごしてもらうか、それを関係者が具体的に考えるようになりました。ようやく「言葉に息が吹き込まれた」のが去年(平成24年度)で、今年(平成25年度)はいよいよ「都市観光」に向かって動き出す時期ということになります。「都市観光事業者交流会」では、中野区観光協会、東京工芸大学、帝京平成大学、明治大学、早稲田大学、タイケン学園、丸井グループ、キリングループ、中野サンプラザ、関東バス、京王バス、西武鉄道、中野区商店街連合組合、東京商工会議所中野支部、「まるっと中野」という情報サイトを運営するフジサンケイリビングが参加し、中野の「都市観光」関係者がほぼ集結しました。せっかく数万人以上の人が増えるのに目的地と中野駅の往復以外で楽しんでもらえないなんて申し訳ない。それを実行に移す時期になりました。

行政には紙に書いた計画がないと動き出せないという面があります。本格的にまちの活性化に取り組むため、平成23年度にはICTコンテンツとライフサポートを盛り込んだ「産業振興ビジョン」、平成24年度には「都市観光ビジョン」を作りました。それらを実施するために作った体制が平成25年度に動き出していく、動き出さなきゃいけないという状況です。

杉山:この「産業振興ビジョン」と「都市観光ビジョン」については中野区観光協会、中野コンテンツネットワーク協会などの民間団体ができ、中野の「役立ちMAP」を作ったり、「中野の逸品グランプリ」のような食べ歩きイベントなども増えたりして、「いかに中野を使ってもらえるか、より多くの人に楽しんでもらえるか」をコンセプトにいろいろと考えて行かなければなりません。ツール、イベントも実施検討され、後は「連携と情報発信」だと思っています。区内はもとより、区外の人たちにも中野を見ていただき、最終的にはグローバルというコンセプトも都市観光では担う必要がある。明治大学の国際日本学部や(2014年開校予定の)早稲田大学国際コミュニティプラザもでき、海外からの観光客も呼び寄せる仕掛けも考え、「新宿からラストワンマイルの中野」のようなコンセプトも当然必要となってくる。その仕掛けをいかに具体的に落とし込むことができるかで中野のグローバル化を加速させることができると思います。案内板や看板なども含めて…。

区長:今からは都市観光資源をどんどん発掘して、点と点を線で結ぶことが必要だと思っています。いろいろな街歩きルートを用意するなど。その線で結んだものが面になって文化になる。そのために区も平成25年度予算を作っていています。

杉山:中野発祥とされる「つけ麺」もそうですが、誰かが点と点を結んで「つけ麺文化」という面にしなければならないと思い「中野つけ麺マニア」というフェイスブックページを作り、区内のつけ麺屋さんを片っ端から食べ歩いて現在50店舗以上になった。「お笑い」「演歌」「劇場」「写真」「寺院」「落語」「コスプレ」などのマニアシリーズを準備し「文化化できるか」の実験に取り組み、その他「中野が聖地&発祥地」というページも作っている。そして「つけ麺」のレイヤーと、例えば「味噌(みそ)という文化」のレイヤーを作った場合、「味噌つけ麺」という新たな文化が生まれ面と面との間が立体化する可能性もある。今は観光協会も「みんなに役立つマップ」などの切り口で地図を作っているが、文化や趣味嗜好(しこう)の街歩きレイヤーも必要です。

■これからの街づくりについて

区長:将来的な計画論も急いで進めなければなりません。四季の都市(まち)ができ、東西連絡路ができたのはいいが、今のままの中野駅改札口ではパンクする。区民や企業からも「中野駅西口を作る、といううわさは聞いているが、いつできるのか?」という話も聞く。西口だけじゃなく区役所もサンプラザも一体的に再開発することになっていて、それをどのような形で整備するのか、その計画論が待ったなしの状態になっています。

杉山:待ったなしで人が流れ、間違いなくさまざまな問題が出てくる。小さく手を打ち、裏で複合的な計画を進めるのか、フレキシブルに中野駅西口を作り、後でどの計画にもマッチする形をとるか、だと思います。

区長:西口改札最優先で検討が必要だと思っています。都市計画事業なので行政手続きで相当年数もかかるが、とにかく一歩一歩進めないと動かない。まずは改札を作り、その計画論との整合性をとりながら次へのステップを位置付けておかないといけないと思っています。西口改札を降りた人が、どのように中野セントラルパークのオフィスやキャンパスに行く形がベストなのか、バス停の位置なども考えなければなりません。

杉山:西口改札が最優先なのですね。「都市観光」というキーワードで言えば、オフィスに向かう道と遊びに行く時の道は違います。中野ブロードウェイは駅からほど遠いことがいいこと。駅からブロードウェイまで歩くときの気持ちはレッドカーペットに似ている。徐々に気持ちが高ぶるためには時間が必要で、到達したときに一気に欲望が開放される感じ。どんどんワクワクし、気持ちを高ぶらせるための充分な時間があるからこそ、着いたときはハイテンションな状態で時間を満喫できるものと考えます。中野の都市観光を考える際には「気持ちの高ぶり」なども加味した上で「都市計画」を立てていただきたい。ホームページでいうところの「滞在時間を増やす」と同じこと。個々が感じる面白いと思うところをルート化し街歩きしてもらう戦略、昭和新道あたりに戦略的に行き止まりを作ってみるなども有効かもしれない。中野は新しいものと古いもの、東と西、北と南、中野はそれぞれの地区で色が違うので、ある大きな県が凝縮されたような街。

そして中野は実は多くの文化が生まれる街となっている。若手苦労人が頭をひねって作り出したもの、生み出した文章、送り出したコンテンツ。八王子方面から運ばれてくる資材が加工され、それに情報が載せられ、秋葉原で商業化されるという流れになっていて、さまざまな文化が生まれているが、うまく商業化できていないだけでは?と感じています。これからの中野は、アミューズメントも文化も商業も中野で完結できる街づくりが必要ですね。

ICTコンテンツ産業について

区長:「中野経済新聞」は一つの文化を形成しはじめていると思う。しっかり点と点が結ばれている。ある記事とある記事がちゃんとつながってストーリーなっていく、中野にはそれがすごく大事なことだと思っています。

杉山:例えば「産学公連携」についても、大学が考えている内容、区長が考えている内容、東商中野が考えている内容など、広く情報を保有しているので、それがどうリンクするのかを意識し、記事を書いています。

区長:産業振興拠点(中野セントラルパーク内にあるICTコンテンツ関連事業推進の拠点)の事業共同体準備会が始まりましたが、まさに筋書きのないドラマですね。しかし、ICT産業のコンソーシアムは無限の可能性を秘めている強い予感とそれを形にしていく面白さを感じています。

杉山:私も中野コンテンツネットワーク協会の一員として参画させていただく予定。それぞれの有識者、スペシャリストが決まり、区内のICTコンテンツ事業者が潤う、中野区に居続ける企業が増える、外から転入してきたいと思える企業を増やすなどのメリットを考えている。そして「都市観光」や、学生たちのコンテンツを企業に斡旋するなどの「産学公連携」にも発展するはず。

区長:この件はこれからも難しい問題が出てきますが、コンソーシアムの考える場所に多くの価値が集まってほしいと思っています。情報やスキルを持った人材とか、人材につながるコネクションなど。集まったときに何かそこに刺激があれば、あっという間に新しい価値がレスポンス良く返ってくる形。サービスなのかプロダクトなのかはわかりませんが、当面はある種の役に立つデータベース、それを基盤として作る。例えば能力を持った事業者に、事業としての形態をうまく組み立てて上げられるような「ビジネス支援の仕組みをつくる」ことや、待ってないで自分たちから「売れるものを作って世に送り出す企画をすすめる」など。そして、それを回すことのできる地味な事務局業務が必要だと思っているのと同時に、定期収入をどう獲得するか、今大事なのはその2つだと思う。現時点で「駒」はそろったが、強いリーダーが必要だと思います。それぞれ力量があるので、定期収入があれば自ずと回っていくと思います。そして産業振興拠点がうまく機能すれば、区内のICTコンテンツ関連業界の人たちの自信となるはずです。

杉山:中野区から新宿区に出ていったサイバーノイズというICTコンテンツ企業、先日CMT大賞を受賞していた。中野新橋の東京コンテンツインキュベーションセンターのOBです。中野区内の企業は活躍し始めると新宿区や渋谷区、港区、品川区へ行ってしまう。今後、そのような企業を産業振興拠点や中野の魅力で留められることもミッションの一つ。中野にいるメリット、ソリューションでつなぐ、クライアントをつなぐ、中野区内の企業だけじゃなく区外にある大きな企業とのコネクションを生かすことができるから、産業振興拠点に関わりながら仕事を得る。そして税金なども含めて中野区は潤う。ハードはある、ソフト面は産業振興拠点も含めて遅れているが、器は出来上がってきているので早く活用したい。

■産学公連携について

区長:大学とも連携したい。どれだけ中野の文化、行事、産業に関わってもらえるか大事です。もちろん各大学とも地域貢献しますというスタンスですが、まだ警戒心も持っているように見えます。実に多くの資源を大学自体が持っているわけですから、それを把握すること、理解することから始めていきたいと思っています。

杉山:各大学は中野区の掲げている産業に絡めて、ライフサポート、ICTコンテンツ、都市観光に関する学部学科を持ってきていて、区の望んだものにマッチしています。明治大学は国際日本学部や総合数理学部、帝京平成大学は医療系の学部、早稲田大学は国際コミュニティプラザ。これは区からの働きかけが届いた感じですよね?

区長:最初から区の産業振興とのコラボレーションを働きかけていた結果だと評価しています。ただ、明治も帝京平成も提案は区の街づくりと合っていましたが、土地取得は国有地の厳正な入札で区が介入できないところでした。各大学が自己努力で手に入れてくれたことに感謝しています。明治のように「器の大きい大学は流石」と思ったのは、地域が欲していることに対してそのカバーエリアをすでに保有していて、長い歴史の中で蓄積された幅広い資源をしっかり提案してくれたということです。今後、具体的にどのように連携するのか非常に楽しみです。

杉山:525日に明治と帝京平成合同でシンポジウムを開く話しが入っており、区長にも話がきていると思うが、中野に開校したことによる記念的なものではなく、継続的に行われていくことで産学公連携が積み上がり、新しいものが生まれるかもしれない。私もいろいろな形で携わっていきたいし、これからも変わりゆく中野を書き留めていきたいと思っています。

■新しい中野の仲間たちに「ひとこと」

区長:中野は楽しい場所、食の逸品、ディープな文化を感じる場所もあり、奥深いところに魅力がある街。そして誰からも誰にとっても入りやすい街づくりを目指しますので、ぜひ街をじっくり楽しんでいただきたいですね。共に新しい中野をつくり上げていきましょう!

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