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外国人向け宿泊施設「やどやゲストハウス」が閉館 再開発や観光客激減の影響で

「やどや」前から宿泊外国人向け「浴衣で中野ツアー」出発の様子(2015年)

「やどや」前から宿泊外国人向け「浴衣で中野ツアー」出発の様子(2015年)

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 中野駅南口にある外国人バックパッカー向け宿泊施設「YADOYA GUEST HOUSE(やどやゲストハウス)グリーン」(中野区中野2)が4月30日、10年の歴史に幕を下ろす。

(関連フォト)毎週火曜夜に開催してきたワンコインディナーの様子(写真右奥が山本真梨子さん)

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 「やどやゲストハウス」は2002(平成14)年、中野区内の小さな一軒家で1号館を開業(すでに閉館)。その後区外などにも展開し、同館「グリーン」は3階建ての酒販店跡をそのまま使い2010(平成22)年にオープンした。日本の「酒屋」を感じる外観、JR中野駅に近いという利便性、中野ブロードウェイに近く、東京都内の新宿以西で数少ないバックパッカー宿ということもあり、フランス・ロシア・イギリス・中国・台湾・韓国・オランダ・アメリカ・ルーマニア・ノルウェーなど、年間を通してさまざまな国の人たちが訪れていた。2011(平成23)年からは毎週火曜に参加費500円の「ワンコインディナー」と題した日本人と外国人の交流のためのイベントを開催し、外国人の集まりを生かして外国人向けマップの作製や翻訳なども手掛けるなど地域貢献なども行ってきた。人気の外国人向け宿だったが、再開発の話やドミトリーの過当競争などのほか、新型コロナウイルスの影響で外国人観光客も激減したため閉館に至ったという。

 館主の山本真梨子さんは「自分自身が90年代にバックパッカーで海外を放浪した。その時にお世話になっていたのがゲストハウスだった。ゲストハウスでは多くの出会いがあるが、当時日本に来てよと話しても、物価が高い、宿がないという理由で断られていた。それなら、外国人が気軽に泊まれる宿があればいいんじゃないかと思ったのが『やどや』の始まり。ゲストハウスは単なる宿泊施設ではなく、世界中から多くの人が集まり、そこでの出会いが人生に大きな影響を与えることもあるほどにユニークなコミュニティー。実際ここで出会って結婚した人も多くいるし、カップルや友達はたくさんできている。世界では文化や宗教の違いで大きな問題が起きるが、この空間では、個々が相手を認め合い、違いを語り合うことでお互いをもっと知り、本当の意味での国際交流が生まれたと思う」と振り返る。

 山本さんは「特に中野という土地で続けられたことは、多様性を受け入れられる度量があるという意味でも最高だった。今回、宿としてのやどやゲストハウスは閉店となるが、世界中のゲスト、パーティーにきてくれた皆さん、中野の地元の皆さま、たくさんのボランティアスタッフ、これまで一緒に仕事をしてくれた仲間、この気持ちのつながりはずっと消えないものと信じている」と話す。「中野区観光協会にも常任理事として引き続き関わっていく予定。やどやでの経験を生かして、これからさらに多文化共生や多様性、国際化などに関わりながら、外国人と中野を結び付けていけたら」とも。

 区内で唯一残る長期滞在者向けの「やどやゲストハウス」(中野1)は引き続き営業を行う。

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