鍋横交差点南側のラーメン店「麺屋どうげんぼうず」(中野区本町4)店主・近廣直也さんの仕事論をライター川口和正さんが取材して執筆した単行本「どうげんぼうずという仕事」が9月1日、「TUK TUK CAFE」から出版された。
同店のラーメンが好きで、客として店に通っていたというライターの川口さんは「客として店に通ううち、近廣さんの話を聞くようになったが、とにかく毎回、引き込まれた。一杯のラーメンが出来上がるまでの話から、動物や子どもたちに対する思い、近所のお年寄りとの関わり、街頭演説に来た自民党の政治家に抗議したときのことなど。ラーメンを食べ終わってから1~2時間、話を聞いたことは何度もあった。近廣さんの仕事に対する姿勢、人との関わり方、そして、政治や社会に対して臆せず、発言して行動していることを活字にして、ぜひ伝えたいと思った」と取材のきっかけを話す。
2021年6月、近廣さんへのインタビューが始まった。近廣さんは「まず企画ありきではなかったのがいいと思った。書きたいものを書く、という川口さんのシンプルな動機がいい。そのモチーフに選ばれることなんて、なかなかないことだと思ったので、照れ臭さもあったが、川口さんの熱意に負け、インタビューに応じることにした」という。
読みどころについて、川口さんは「どうげんぼうずのラーメンが出来上がるまでのプロセスとストーリーも語ってもらった。『1ミリでもいいから、昨日よりも成長していたい』という意思、『失敗こそが相棒であり、先生である』といった経験から紡がれたメッセージなど、ラーメン屋に限らず、全ての仕事において大事なことが語られている。消費税増税やコロナ禍で飲食店は大きな打撃を受けたが、近廣さんがその危機をいかに乗り切ったか、あるいは、乗り切ろうとしているか、ここも読みどころ」と話す。「『ラーメン先生』と題した章も必読。先日、どうげんぼうずが店を構える中野・鍋横商店街の夏祭りに、どうげんぼうずも模擬店を出したが、『ラーメン先生』の教え子が手伝いに来ていた。『ラーメン先生』とは何か、ぜひ確かめてほしい」とも。
取材・構成の川口さん、編集の杉山敦さんは共に中野区民で同店の常連客。撮影は沼田学さん、デザインは下山ワタルさんが務めた。
近廣さんは1975(昭和50)年、山口県下関市生まれ。ミュージシャンを目指し、17歳で上京。ソロシンガーとして活動する。多くのアルバイトを経て30歳過ぎからラーメン店で働き始め、2013(平成25)年、笹塚に「麺屋どうげんぼうず」を開業。翌年独立して、現在の場所に移転。差別や悪政に明確に反対する舌鋒鋭いツイートも人気で、フォロワーは1万人を超える。イスラエルのパレスチナへの侵攻、虐殺に対し、2024年2月より店の定休日を使い、麹町のイスラエル大使館の前で一人で抗議を始める。その様子を記録した動画はアラビア語圏でも大きな共感を呼んでいる。好きなものは広島カープと猫。
定価は2,200円。同書は同店や「TUK TUK CAFE」ウェブサイトで販売する。