2017(平成29)年に亡くなった写真家・風間健介さんの写真展「夕張」が3月9日、廃業した街の写真館をリノベーションしたギャラリー「スタジオ35分」(中野区上高田5)で始まる。
風間さんは1960(昭和35)年、三重県津市生まれ。高校卒業後に上京しミュージシャンを撮るが、その後、全国を放浪する。1989(平成元)年に夕張市に移住して炭鉱の街に16年間住み、撮影し続けたという。2005(平成17)年には写真集「夕張」(寿郎社)を出版、2006(平成18)年には日本写真協会新人賞受賞。2006(平成18)年以降は北海道を離れ、東京、埼玉に移住し、2015(平成27)年からは千葉県館山市に自宅兼作業所を構えていた。2017(平成29)年没、享年56歳。
ギャラリー店主の酒航太さんによると、風間さんは生前、「夕張の町並みを見たとき、その寂れた風景は、奈良、京都とは違うが、日本人にとっての原風景のような気がして落ち着けそうだった」と話していたという。風間さんが写す炭鉱町の痕跡は、「巨大産業を否定したり、批判したりするものではない。それどころか風間の写真の中にある滅びた炭鉱はとても美しくて雄大」と酒さん。生前、風間さんは写真家として作品を売って生計を立てるというポリシーを貫き、手売りでプリントを販売していた。写真家としては理想だが現実的には難しく、経済的にはとても苦しかったという。「この風間健介という一人の写真家を通して、人間の矛盾を孕(はら)みながら進んでいく時間と文明の盛衰を感じさせる作品」。同展では、この夕張のシリーズから風間さん自身が焼いたオリジナルプリントを展示販売する。
開催時間は16時~22時。日曜~火曜定休。4月2日まで。