写真家・池野詩織さんの写真展「ぬかるみの記憶」が3月15日、廃業した写真館をリノベーションしたギャラリー&バー「スタジオ35分」(中野区上高田5)で始まった。
池野さんは1991(平成3)年神奈川県生まれ。近年では主にファッションや音楽、コマーシャルなど、ジャンルを問わず写真表現の活動を続けるほか、東京を拠点に国内外で活動する。「commune Press」(渋谷区)から写真集「ORB」や「my space」を出版するほか、あいみょんさんのシングル「今夜このまま」「さよならの今日に」やGEZANのアルバム「Silence Will Speak」のジャケット写真、UNDERCOVERのルック撮影などを手がける。
佐渡島で3年前から空き家となっていた池野さんの祖父母の家を訪れ、記憶をたどるように祖父母の家と島の記録を始めたという作品を展示する。池野さんは「幼少期は田植えの季節のたびに島に渡り、田んぼでよく遊んだ。田んぼの中のオタマジャクシや跳ねるカエルを姉と競って捕まえた。春はタケノコを掘って、夏は海で泳いだ。都市生まれの私にとって、この島の自然は特別だった。家主をなくした家は、あっという間にあらゆる生物にのみ込まれていた。懐かしさと入り交じって、私は不思議な違和感を抱いていた」と話す。展示の写真は、池野さん自身で初めて手焼きしたというカラープリント。
ギャラリー店主の酒航太さんは「出会いはちょうど10年ほど前。当時から彼女は精力的に写真の活動をしていたが、ちゃんと作品を見せてもらったのは今回が初めてで、その作品は彼女が幼少の頃から訪れていた祖父母の住む佐渡島の写真だった。とても個人的な写真だが、不思議と自分自身の記憶とも結び付き、流れゆく時間への思いが静かに込み上げてきた」と話す。
開催時間は16時~22時。日曜・月曜・火曜休催。鑑賞無料。4月8日まで。