中野駅南口の桃園商店街(中野区中野3)やレンガ坂商店街(同)など桃園エリアの有志が4月15日から行っている「街に明かりを灯(とも)し続けます」活動が話題となっている。
4月12日、新型コロナウイルス感染拡大防止の観点で「まん延防止等重点措置」が東京都に発令され、飲食店を中心に営業時間短縮要請が始まったことに起因し、沖縄のとある飲食店が始めた「明かりを灯そう」活動。桃園商店街「中野テリトリ」店主の寺崎敦さんの友人ということもあり、「自分たちにも何かできないか」と同14日にインスタグラムにアップしたところ、同エリアの「ロジスパイス&アンダーバー」店主の蟻塚純さん、レンガ坂「青二才」店主の小椋道太さんがすぐに賛同し、その日の夜からその活動が始まった。
この活動は同エリアで瞬く間に広がり、「麦酒大学」「五感」「蔡菜食堂」「葡萄や」「Bacchus」「手しおごはん 玄」「焼肉食道かぶり」「root」「BANKAN」「ボケリア」「りんりんりん」「vivo daily stand」「青二才はなれ」などの飲食店のほか、「花月」「和泉不動産」「モコポコ帽子店」などの飲食店以外にも広がり、現在約20店舗が「街に明かりを灯し続けます」ポスターを掲示し、営業時間が終了してから朝までの間、何らかの形で明かりをともしている。
4月23日に東京都の小池百合子都知事が「緊急事態宣言」要請に伴う記者会見で「夜8時以降は街灯を除いて店頭などの照明を消すよう業界団体を通じて要請する」と話したが、同エリアでは「明かりを灯し続ける」活動に賛同する店舗が増えている。小椋さんは「灯を消せと言われました。灯までも消せと言われました。でも、僕は点け続けようと思うのですが間違っていますか。もちろん、この時代を生きる人間としていち早くコロナ収束に向かうために要請には従いたいと思っています。帰り道が早い時間なのに暗くて不安だろうからと点けていただけなのに。僕たちはサービス業です。勝手なホスピタリティを持って人がそうしてほしいと思う前にコロナ禍で暗くなった道を、ただ灯を点して安心して通ってほしいと思っているだけなんです」(原文ママ)というSNSでのつぶやきは多くシェアされた。
同日、「麦酒大学」の山本祥三学長は「街の明かりを消せと言われてもそれは従えない。営業を自粛して休業には応じたとしてもモラルのない一部の人たちの為に街の治安維持まで自粛する気はない。こんなご時世に出勤しなくてはならない。そんな仕事に従事してる方たちが安心して街に帰ってこれるよう、私たちは明かりを灯し続けます」(原文ママ)とツイッターでつぶやき、7000以上のリツイートと1.6万人のいいね!がついていて話題となっている。
この地域をよく歩いて通る看護師の原田幸さんはフェイスブックで「どうかこの取り組みは続けて欲しいです!今医療現場で働いて感じているのはコロナの病床やそれに関わる人員や物資を増やしている反面、コロナじゃない患者さんの救急搬送や治療が難しくなっていること。そして自殺者も増えていること。コロナじゃない患者さんがいっぱい亡くなっていること。医療に携わっている人は少なからずそのことに葛藤を持っている人は多いと思います。助けられる命が助からない。助けられない。みんな人とコミュニケーションの機会が少なくなって、お酒を飲んで気分転換する機会もなくなっている中で仕事の帰り道に飲みに行けなくても人と会う機会が減っても、その道中でお店が開いてなくても、看板の明かりだけでも灯っていることにどれだけの人がホッとしたり心が救われたりするのだろうかと思い、この取り組みが素敵だなと思っていました。これまでずっと耐え続けて来た飲食店の方々のアイディアと賛同されている方々の優しさでスタートしたこの取り組みをどうか続けて欲しいです」(原文ママ)とつづっている。
蟻塚さんは「この活動は近隣区などにも広がりつつある。これからこのコロナがどのようになるかはわからないが、疲れて帰ってくる人たちの足元だけでも照らし続け、気持ちだけでも前が向けるよう、この取り組みを続けて行こうと考えている」と話した。