中野区内のアパートで、家族3人でひと夏を過ごすことになったアメリカ人フードライターが書いた「米国人一家、おいしい東京を食べ尽くす」が話題となっている。
同書は今年5月26日に初版が発行され、9月11日には5刷発行。現在4万部が発行され、さらに増刷が検討されているという。ネット上では「英国一家、日本を食べる」(亜紀書房)との比較コラムが多く見受けられるが、「二番煎じか?」という大方の予想を覆し、それぞれ特徴が出ているという結論が多い。
作者のマシュー・アムスター=バートンさんは、米国シアトル在住のフードライターで、中野の庶民的な飲食店を中心に8歳の娘と普通に生活をしながら食べ歩き、外国人目線で「東京は素晴らしい」「日本は安全」「街全体がテーマパークだ」という内容の出来事を書きつづっている。マシューさんの「食」のバイブルは漫画「美味しんぼ」。
登場する店の多くは、マシューさんが滞在していた中野のアパート付近の飲食店で、チェーン店のドーナツ店、たこ焼き店、焼き鳥店などと、地元の人がよく行く庶民的なうなぎ店、天ぷら店、そして「ワンダーランド」と称したスーパーマーケットなど。普段の生活で起きること、食べることの中で、日本人が当たり前だと思っていることを外国人目線で鋭く、ユーモアたっぷりに執筆している。
同書の翻訳を担当した関根光宏さんは、「若いころに中野でアルバイトをしていた経験があり、中野の素晴らしさ、おもしろさはそれなりにわかっているつもりだった。しかし、この本を翻訳するにあたって原稿を片手にあらためて散策してみて、中野の魅力を再発見した」とコメントする。
同書を読んだデジタルハリウッド大学院の荻野健一教授は、「この本を読んで、何気ない日常が外国人目線により魅力的な街になるという衝撃を覚えた。普段、外国人向けインバウンド戦略を考える立場にあるが、外国人の視座で日本の魅力を再構築し、それらを中野、そして日本の資産として残し、発信すべきだと強く感じた」と感想を話す。
すでに中野区内の団体からは「中野を舞台に映画化、ドラマ化、アニメ化したい」という意見も出ており、同書がこれからの中野の国際化に影響を与える可能性もある。
なお、同書は米国のクラウドファンディング「Kickstarter(キックスターター)」で資金を募り、電子書籍として出版したものが日本の出版社の目に留まり、エクスナレッジ社から出版されたという経緯がある。