空間演出家・小池博史さん演出・脚本・振り付け・構成の舞台「完全版マハーバーラタ～愛の章／嵐の章」公演が8月20日、中野駅南口・千光前通り「なかのZERO」（中野区中野2）大ホールで始まる。主催は文化庁・「完全版マハーバーラタ」実行委員会・サイ（新井1、TEL 03-3385-2066）。

（関連フォト）「完全版マハーバーラタ～愛の章／嵐の章」ポスター

　同舞台は、小池さんが2013（平成25）年から取り組み、世界三大叙事詩の一つといわれているインドの「マハーバーラタ」全編を舞台化したもの。「マハーバーラタ」とは、善悪・生死・愛・戦いなど人間のあり方を問うテーマが織り込まれたヒンズー教の聖典のタイトルで、長さにして聖書の4倍といわれる世界最長の叙事詩の古代インドの聖典。「偉大な（マハー）バラタ族の物語」という意味で、インドをはじめ、ジャワ島、マレー半島、タイ、バリ島を中心としたアジア各地の宗教・思想・文化・哲学・倫理・政治・法律など、あらゆる方面の根本経典として尊崇されているという。

　「完全版マハーバーラタ」は前編「愛の章」と後編「嵐の章」の2部構成で、それぞれ約3時間、合計6時間の長編舞台となる。前編の「愛の章」ではバラタ族のクル家とパーンドゥ家の対立するさまを、後編の「嵐の章」では対立が悪化して大紛争となり、やがてバラタ族が消滅するまでを表現している。サイの広報・黒田さんによると、同舞台をアジア人が舞台化し上演することは世界初という。

　出演は、リー・スイキョンさん（マレーシア／舞踏）、小谷野哲郎さん（バリ舞踊）、パムンカス・ダナンさん（インドネシア／ジャワ舞踊）、カンパ・ロンナロオンさん（タイ／タイ舞踊）、川満香多さん（琉球舞踊）、プルノモ・スルヨさん（インドネシア／ジャワ舞踊・エアリアル）、土屋悠太郎さん（タイ舞踊）、シヌンヌグロホ・ヘルマワンさん（インドネシア／ジャワ古典）、ムーンムーン・シンさん（インド／俳優・インド舞踊）、福島梓さん（コンテンポラリーダンス・俳優）、ウェオダオ・シリスークさん（タイ／タイ舞踊）、今井尋也さん（能役者）、川野誠一さん（俳優、狂言師）。演奏は、下町兄弟（パーカッション・ラップ）、今井尋也さん（小鼓・掛け声・能管・しの笛・鳴り物）、Taku Hosokawaさん（唄三線（うたさんしん）・笛・胡弓（こきゅう））。

　小池さんは「時代は、新たな方法を探る必要性を訴えている。消費に基づいた文化の形ではなく、新しい共有の場を生み出しつつ、多様な豊かさを認識させるような場でなければ、今後の社会は持続しないだろう。つまりそれは見たことのない哲学の場の創出でもある。そして『完全版マハーバーラタ』はその実践。通常なら相いれない古典アーティストが結集し、多様な統合による変質化によってしか立ち現れ得ない形を生み出す。まるで陶芸のように、溶剤を塗って焼くことにより画期的な新色が現れ出るのと同じ『変容』がそこにはある。ましてやこのコロナ禍の中、アジア中からトップアーティストがやって来て、2週間の隔離を経てなお、新たな形を生み出したいとする意思の在りかに、深いものを見ざるを得ない」と話す。

　空間演出家・作家・振付家・映像作家、「舞台芸術の学校」代表で、武蔵野美術大学空間演出デザイン学科教授の小池さん。茨城県日立市生まれ、一橋大学卒業で、1982（昭和57）年、パフォーミングアーツグループ「パパ・タラフマラ」設立。以降全55作品の作・演出・振り付けを手掛け、2012（平成24）年5月解散。直後に「小池博史ブリッジプロジェクト」を立ち上げ、空間芸術と名乗りつつ、創造性を核に教育・発信・創作を三本柱とした連携プロジェクトを展開。アジア各地で21作品を創作。現在までに演劇・舞踊・美術・音楽などのジャンルを超えた空間芸術作品を10カ国で創作、40カ国で公演。2020年、初の映画監督作品「壊れた時間のバラタ」を制作。1997（平成9）年～2004（平成16）年つくば舞台芸術監督、アジア舞台芸術家フォーラム委員長、国際交流基金特定寄付金審議委員（2005年～2011年）など、さまざまな審議員、審査員を歴任。

　チケットは、「愛の章・嵐の章 通し 前売り券」がS席＝1万6,000円、A席＝1万2,000円、B席＝8,000円。「愛の章・嵐の章 各章単独公演 前売り券」がS席＝9,000円、A席＝7,000円、B席＝4,500円。中野区民割や子ども割なども用意する。チケットは8月23日まで、「完全版マハーバーラタ～愛の章／嵐の章」公式サイトで販売する。8月23日まで。